介護の仕事と看護の仕事の境界線については、議論になることがしばしばある。そのひとつが、たんの吸引である。喀痰吸引はかつては医療従事者にしか認められていなかった行為だったが、現在は訪問介護でかつ医師の指示と看護師との連携があれば、ホームヘルパーが行うことも認められるようになった。入院を必要としない高齢者のなかにも筋力の低下が原因で、たんをはき出すことができずに吸引の介助を求める要介護者が増加したからである。ちなみにホームヘルパーが訪問介護でたんの吸引を行う場合は、喀痰吸引等研修を受けたうえで、認定特定行為業務従事者認定証を得る必要がある。この資格は、転職後に在宅介護に携わりたい人も取っておくと有効だろう。

訪問介護で介護職員と看護職員が共同で行う業務のひとつとして、訪問入浴介護が挙げられる。これは自宅のバスルームで入浴をすることができない要介護者に対して、その家庭に移動式の特殊な浴槽を持ちこんで入浴の介助を実施するサービスのことである。訪問入浴介護は介護職2人に対して看護職員1人をつけなければならないという規定になっている。ただし、主治医からの許可があり要介護者の状態が良好である場合には、介護職のみで実施することも認められている。

介護職のみで訪問入浴が実施された場合は、介護サービスの利用料金が減額になる。また、専用の浴槽を持ちこんだ場合でも全身を入浴させることが困難で、手足や陰部のみといった部分浴になった際も、利用料金が減額になる。介護サービスの境界線と利用料金はこれまで何度も改定が行われているので、今後もこまめな確認が必要である。